少年と妖怪、奇妙なコンビの旅路
『うしおととら』は、 藤田和日郎先生による 伝奇アクション漫画の金字塔です。
寺の息子である少年が、 自宅の蔵の地下で封印されていた 大妖怪を解き放ってしまったことから 物語は始まります。 「食ってやる」「食わせない」と 喧嘩ばかりしていた二人が、 やがて唯一無二の相棒となり、 世界を滅ぼす最強の邪悪に立ち向かう。 熱く、そして泣ける 壮大な冒険譚をご紹介します。
物語を彩る主要人物たち
最強のコンビ
蒼月 潮(あおつき うしお)
本作の主人公。 正義感が強く、真っ直ぐな性格の 中学生。 伝説の武器「獣の槍」に選ばれ、 それを使う代償として 自分の魂を削りながら戦う。 誰かのために怒り、泣ける優しさが 人間・妖怪問わず多くの味方を惹きつける。
とら(長飛丸)
潮の家の蔵に500年間封印されていた 金色の毛並みを持つ大妖怪。 雷と炎を操る強大な力を持つ。 隙あらば潮を喰おうとするが、 「獣の槍」が怖くて手が出せない。 現代文明(特にハンバーガー)にハマる お茶目な一面も。
潮を支える人々
中村 麻子(なかむら あさこ)
潮の幼馴染。 気が強く、潮とは喧嘩ばかりしているが、 誰よりも彼を心配し想っている。 ラーメン屋の娘。
井上 真由子(いのうえ まゆこ)
潮と麻子の幼馴染。 おっとりした性格だが芯は強い。 とらに「ハンバーガー」を与えた張本人。 物語後半では、 「お役目」の血筋であることが判明し、 重要な役割を担う。
最強の敵
白面の者(はくめんのもの)
本作のラスボス。 九つの尾を持つ巨大な白狐の姿をした 大妖怪。 人の恐怖や憎しみを糧とし、 古代から幾度となく国を滅ぼしてきた 絶対的な悪意の権化。
序盤:獣の槍との出会いと旅立ち
光覇明宗(こうはめいしゅう)という 寺の住職の息子・潮は、 自宅の蔵の地下で、 一本の槍に縫い付けられた 妖怪(後のとら)を発見します。
化け物を呼び寄せてしまった責任から、 潮は槍を引き抜き、 妖怪を解放する代わりに 「獣の槍」の力で彼を脅し、 協力させて退治します。
その後、潮は父から 「死んだと聞かされていた母が 生きている」こと、そして 「母は白面の者に深く関わっている」 ことを知らされます。 真実を知るため、 潮はとらと共に、 母がいるとされる北海道・旭川を目指す 旅に出ます。
中盤:母の真実と白面の者の脅威
旅の途中、 潮ととらは多くの妖怪と戦い、 また時には彼らを救い、 人間や妖怪たちとの絆を深めていきます。 (鎌鼬の兄妹や、復讐鬼・ヒョウなど)
北海道にたどり着いた潮は、 ついに母・須磨子(すまこ)の 真実を知ります。 彼女は、日本を支える結界の要 「お役目」として、 海の底で白面の者を抑え込み続けている 人柱だったのです。
白面の者が復活すれば日本は沈没する。 それを防ぐため、 母は孤独に戦い続けていました。 潮は、母を救い、 白面の者を完全に倒すことを誓います。
獣の槍の誕生秘話
過去へのタイムスリップを経て、 「獣の槍」の悲しい起源も明かされます。 古代中国で、 白面の者に両親を奪われた 姉弟(ジエメイとギリョウ)。 姉は炉に身を投げて人柱となり、 弟はその憎しみと悲しみで 自らを鬼に変えて槍を打ちました。 槍には彼らの魂が宿っていたのです。
終盤:白面の者の復活と記憶喪失
最終決戦が近づく中、 白面の者は狡猾な策を弄します。 自身の分身を使って 「獣の槍」を破壊させようとしたり、 人々の記憶から「潮ととら」の存在を 消し去ったりして、 潮を孤独に追い込みます。
誰も自分のことを覚えていない絶望の中、 それでも潮は立ち上がります。 その姿を見て、 かつて潮に救われた人々や妖怪たちが 記憶を取り戻し、 日本中の勢力が 「打倒・白面」のために集結します。
とらの正体
そして、とらの驚くべき過去も 明らかになります。 彼は元々、白面の者が生まれた時、 その肉体からこぼれ落ちた 「陽の気」を宿して生まれた人間 (シャガクシャ)でした。 数奇な運命の末に、 白面の者への憎しみを持つ 「字伏(あざふせ)」という妖怪へと 変貌していたのです。
最終決戦:太陽と月
復活した白面の者との最終決戦。 母・須磨子や真由子たちが結界を張り、 自衛隊や妖怪たちが総力戦を挑みますが、 白面の力は圧倒的です。
しかし、潮ととらは 互いを信じ、背中を預けて戦います。 二人の魂が共鳴し、 獣の槍は究極の輝きを放ちます。
白面の者が本当に欲しかったもの、 それは恐怖や破壊ではなく、 人間の赤子が持つような 「静かな安らぎ」でした。 それを認められず、 嫉妬と憎しみに狂っていたのです。
潮ととらの連携攻撃により、 ついに白面の者は敗北。 「名はなんと申す…?」と問いかけ、 二人の名を刻み込んで消滅しました。
結末:とらとの別れ
白面の者を倒しましたが、 とらもまた限界を迎えていました。 白面と同じ根源を持つとらは、 白面の消滅と共に 自身も消えゆく運命にあったのです。
潮は「行くな」と泣き叫びますが、 とらは満足げに笑います。
「もう…喰ったさ。 ハラァ…いっぱいだ」
かつて「潮を喰う」と言っていたとらは、 潮との冒険、友情、そして魂を 腹一杯になるまで「喰らった(満たされた)」 と言い残し、風と共に消えていきました。
エピローグ
日常が戻りました。 妖怪たちは人前から姿を消し、 潮は普通の学生生活を送っています。 しかし、その心には 確かな「相棒」の記憶が残っています。
ラストシーン。 潮が空を見上げると、 雲の切れ間から太陽の光が差し込みます。 それはまるで、 金色の妖怪が笑っているかのようでした。
